TPP知財条項への緊急声明

TPP著作権条項に関する緊急声明

TPP(環太平洋経済連携協定)では、著作権など知的財産権を巡る条項が各国の最も深刻な対立点とされ 、これまで国内外の多くの団体や有識者達が、交渉の透明化を求め、(特に情報社会の進展に逆行する内容での)米国提案に懸念を表明してきた。

しかしながら、交渉終盤とされる現在、協議の密室性はむしろ高まっており、政府説明会はほとんど「説明できないことの説明」に終始している 。国内有数のメディアは繰り返し、「著作権保護期間の大幅延長」や「著作権侵害などの非親告罪化」について日本政府は米国要求に対して譲歩する方向と報じ、政府がそのたびにこれを否定する事態が続いている。こうした状況は虚偽・不正確な情報が飛び交う事態を招いており、その結果国民の間では混乱が広がっている。

私たちは、わが国の文化・社会にとって重要な決定が国民不在の密室の中でおこなわれ、21分野一体のため事実上拒否できない妥結案だけが国民に提示される事態を、深く憂慮する。

著作権の保護期間延長の提案は、無用な長期化が権利者不明の「孤児著作物」を激増させ、デジタル化の振興を害したとして、欧米でさえ期間短縮提案が議論されている現状に、一見して逆行している。期間の超長期化がはほとんどの遺族には収入増さえもたらさず、権利処理困難により死蔵作品を増やし、古い作品に基づく新たな創造を困難にすることは、既に国内外の実証研究から明らかである。さらに日本について言えば、それは年間6200億円にも上る著作権収支の対外赤字を固定化し拡大させる可能性が高く、知財立国に反すると指摘される。

被害者の告訴なき起訴・処罰を可能にする非親告罪化は、厳密にいえば違法だが権利者に実害がない限り強いて問題視はされていない多くの利用(tolerated use)を、萎縮させる恐れがある。それは、クールジャパンを裾野で支えるパロディなどの二次創作、様々なネット新ビジネス、企業内での研究開発や教育現場・福祉現場、デジタルアーカイブ、復刻出版や復刻上映など社会の広範な領域での非悪質な利用において、権利者ではなく警察・検察に手続きの主導権が移り、第三者通報などにより摘発・起訴がされる可能性を高めるからである。

その他、「コピーライトトロール」による企業・個人への高額請求を含む、米国での知財訴訟の増大と賠償金および訴訟費用の高騰を招いた主因とされる「法定賠償金」の導入など、様々な条項について交渉の現状は全く明かされていない。

これらの多くの条項は、過去に日本では異論が強く、十分な議論を経た上でわが国の現状には合わないなどとして導入が見送られた経緯がある。日本は、米国で新ビジネスやアーカイブ・パロディ表現の原動力とされる、「フェアユース」のような柔軟な著作権の一般的例外規定を持たない。また、弁護士主導・訴訟解決型とも言える米国型の各種ビジネスとは、依然大きく異なるエコシステムを持つ。米国型のルールのうち相手国に都合の良い部分だけが急速に導入されれば、経済・文化における日本の活力がそがれかねない。

仮に、日本にも導入すべきと映る個別の条項があるとしても、条約は国内法に優先する。多国間の多角的貿易協定の一部としてそうした条項が義務付けられてしまえば、数年後に社会の実情に応じて見直そうとしても、もはや国会すら法令を変更することはできない。変化の速い情報ルールの分野でそうした拘束を受ければ、わが国の競争力や豊かな文化を減殺する恐れが強い。それは、コンテンツの流通促進を重視する内閣「知的財産推進計画」や自民党「知的財産戦略調査会提言」の方向性にも反し、次世代への大きな負の遺産となる。

国際交渉は、一見趨勢の決まったように見える最終段階こそが最も重要である。国会承認の段階で混乱が生じ政府関係者の努力が無駄にならないためにも、各国の利害対立の大きい知財条項を妥結案から除外して海賊版対策のような異論の少ない分野に絞り、さらに条項案を含む十分な情報公開を修正交渉が可能な段階におこなうことを、強く求める。

※なお、本声明はTPP自体への賛否を述べるものではない。

TPPの知的財産権と協議の透明化を考えるフォーラム

[クリエイティブ・コモンズ・ジャパン http://creativecommons.jp/
thinkC(著作権保護期間の延長問題を考えるフォーラム) http://thinkcopyright.org/
MIAU(一般社団法人インターネットユーザー協会) http://miau.jp/]

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