「知的財産推進計画2013」及び「知的財産政策ビジョン」へのパブリックコメント

3月19日、「知的財産推進計画2013」及び「知的財産政策ビジョン」の策定に向けた意見募集(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/ikenbosyu/2013keikaku/bosyu.html)に対して、thinkTPPIPとして、下記の通りパブリックコメントを提出しました。

1.安倍首相は、3月15日にTPP交渉への参加を表明し、今後各国との事前協議、本交渉が進展するものと予想される。

2.当フォーラムでは従来、別紙提言(http://thinktppip.jp/?p=1)のようにTPP協議の透明化を訴えており、今後も政府が一層の情報開示をおこない、広く社会の知見を交渉に反映することを要望する。

この点、TPPの厳格な秘密協議性には交渉各国においても懸念が強く、米国本国でも多数の議員が情報アクセスを求める公開書簡をオバマ大統領に送付するなど異論が高まっている。
日本政府としても、十分な情報公開を各国に提案すると共に、守秘義務に反しない範囲での公開シンポジウム、広い層の利害関係者(権利者・ユーザー・産業側)からの多様な意見聴取などの手法により、交渉過程での国民との課題共有に一層の努力をされたい。

3.また、当フォーラムはTPP自体への是非に意見を述べるものではないし、悪質な海賊版への対策には賛成する。

しかし、別紙提言の通り、流出したTPP知財条文には著作権保護期間の大幅延長・刑事罰の非親告罪化・法定賠償金の導入など、重大な制度改変につながる規定が多数盛り込まれている。これらは我が国の国情にあわないとして過去に異論が強かったものであり、急速に導入すれば日本の文化ならびに関連する産業の活力を損ないかねない。

特に、あまりに多くの知財条項を条約上の義務として受けいれてしまえば、今後、ビジネス情勢や国民の多数意見が変わっても、国会ですらそのルールは変更できない点で影響は深刻である。それでは変化が早く柔軟性が生命線と言える昨今の文化・情報産業において、かえって日本の競争力を削ぐ危険がある。

知財条項については特に各国の対立も根強く、米国が孤立気味との報道(日本経済新聞3月5日)もあるため、日本の交渉方針として、知財条項をTPP協議の対象外とする、もしくは(上記規定を中心に)対象条項を大幅に縮減することも検討すべきである。
いわゆるISD条項についても、我が国知財政策に重大な影響を与える可能性があるため、慎重な検討を要望する。

4.他方、既存の作品や各種資料では権利者不明の著作物(孤児作品)が極めて高い割合を占めることは世界的な問題となっており、EUでは昨年、大胆な孤児作品活用のための新ルールが採用された(http://current.ndl.go.jp/node/21884)。

TPP協議においても、各種の新ビジネスや情報流通を促進するための孤児作品対策の共通した取り組みを、日本から各国に提案することも検討されたい。

TPPの知的財産権と協議の透明化を考えるフォーラム
[ クリエイティブ・コモンズ・ジャパン http://creativecommons.jp/
thinkC(著作権保護期間の延長問題を考えるフォーラム) http://thinkcopyright.org/
MIAU(一般社団法人インターネットユーザー協会) http://miau.jp/ ]