thinkTPPIP:TPP政府対策本部(内閣官房)への意見提出(2014年8月)

2014年8月8日、TPP政府対策本部(内閣官房)への意見募集に対して、thinkTPPIPとして、下記の通り意見を提出しました。


該当する交渉分野:知的財産

意見:

(情報公開について)

去る7月12日の朝日新聞の報道では、「日本は保護期間延長と非親告罪化には反対しているものの、交渉国の中で孤立しつつあり、最終的に妥協を迫られる可能性が高い」旨が報じられている。

政府は一貫してこうした状況報道を誤報と説明しており、報道相互間にも矛盾が見られることから、少なくとも一定程度はそれらが不正確であろうことは当団体らも承知している。

しかし、不正確な報道とそれによる混乱が再三繰り返されるのは、政府の情報開示があまりに少ないことが主因である。かかる事態は、日本の交渉に決して良い影響を与えていない。

http://digital.asahi.com/articles/DA3S11237579.html

米国では昨年11月、80名を超える知財分野の法学者達が連名にて、オバマ大統領にTPP知財条項の即時全文公開と、完全にオープンな交渉を求める公開書簡を送付した。

書簡ではUSTR 内の産業通商諮問委員会(ITACs)において、「数百名の委員達は事前に合衆国からの提案全てについてコピーを受領し、意見を寄せるためのプロセスに参加した」と述べ、より公平な社会一般への情報公開と意見聴取のプロセスを求めている。

http://thinktppip.jp/?p=246

先日7月28日の交渉説明会においても、こうした米国での状況を踏まえ、「USTRが数百名と情報共有できるなら、日本においても多数の有識者を外部委員とし、『何が問題でどう修正すれば日本に有利な規定になるか』を検討して交渉に生かすべき」との提起が当団体らからなされた。

これに対する対策本部担当者の説明は、「各分野の所管官庁が利害関係団体と継続的に意見交換している」というものであった旨、7月29日付の日本農業新聞などでも報じられている。

http://image.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=29019

しかしながら、当団体らは、インターネットユーザー協会が交渉開始以前に一度意見聴取をされたことがあるのみで、所管官庁である文化庁から継続的なコミュニケーションなど一切受けていない。

上記担当者の説明からは、文化庁担当者は一部の利害関係団体とのみ継続的に交渉内容について意見交換していると判断するほかないが、そのような事実はあるのか。

説明と共に、今後は偏波でない幅広い団体との十全な協議を強く求めたい。

なお、前述の米国法学者意見にもある通り、TPP交渉については、本来は業界団体だけでなく一般市民も参加可能な公開の説明会を開催すべきである。

現在の団体説明会のインターネット中継による公開でも構わないので、今後はIT技術を用いたコミュニケーションを積極的に活用して頂きたい。

(著作権分野について)

去る7月9日、米国有力NGOである電子フロンティア財団(EFF)やクリエイティブ・コモンズ、ウィキペディアを運営するウィキメディア財団、米国やカナダの大学・研究図書館からなる北米研究図書館協会をはじめとする各国の図書館団体、インターネット・アーカイブ、消費者団体の国際組織である国際消費者機構など有力35団体が、TPPにおける著作権の保護期間の延長に反対する内容の交渉関係者宛の公開声明を共同で公表した。同声明には当団体らのほか、国公私立大学図書館協力委員会なども賛同し加わっている。

また、7月15日には、米国著作権法の包括的な見直しの一環として、米国議会のヒアリングでも、デジタル化社会の現実を踏まえた著作権の保護期間の見直しが議題となり、複数の有力な参考人が部分短縮に前向きな意見を述べた。

http://thinktppip.jp/?p=383

http://www.jaspul.org/news/2014/07/tpp.html

保護期間延長問題・非親告罪化ほかの著作権分野の交渉においては、こうした米国や国際社会の動向も十分に汲んだ上で、日本にとってメリットのない硬直的な制度が導入されないよう、交渉に生かして頂きたい。

TPPの知的財産権と協議の透明化を考えるフォーラム

[クリエイティブ・コモンズ・ジャパン http://creativecommons.jp/
thinkC(著作権保護期間の延長問題を考えるフォーラム) http://thinkcopyright.org/
MIAU(一般社団法人インターネットユーザー協会) http://miau.jp/]