TPPの知的財産権と協議の透明化を考えるフォーラム 提言

特定非営利活動法人クリエイティブ・コモンズ・ジャパン
thinkC(著作権保護期間の延長問題を考えるフォーラム)
MIAU(一般社団法人インターネットユーザー協会)

1 野田政権は、TPPへの参加方針を固め、来る総選挙では交渉参加の是非が最大の争点になると予想されています。

しかし、肝心のTPPの内容はほとんど情報開示がされず、私たちは内容を知らされないままに参加の是非を問われています。TPPは秘密協議ですから、交渉に参加すれば国民に情報がもたらされる、ということもありません。

このフォーラムは、TPP自体についてはニュートラルです。ただその密室性と、漏れ聞こえる知的財産権条項の内容には強い危惧を抱きます。仮に伝えられるような内容のまま日本が加入することになれば、豊かな文化の創造と情報の流通は委縮し、この国の未来を担う情報・文化セクターを弱体化させ、コンテンツ市場でも日本を輸入超過大国の現状に固定化しかねないと考えています。

そこで私たちは連名にて、TPPの公開交渉化を強く求め、仮にそうならない場合、少なくとも知財条項をTPPの対象から除くことを参加条件にするよう、政府に求めます。

TPPへの加入の是非は、疑いなく日本の文化・社会・経済のゆくえに大きな影響を及ぼします。私たちは今後、公開のフォーラムを開催し、上記呼びかけへの賛同者を募り、同様の危惧を持つ海外の団体と国際的に連携し、来る総選挙でのTPPの透明化・知財政策の問題意識についての候補者の見解を広く伝えていく予定です。

2 TPPは秘密協議ですが、知的財産をはじめ幾つかの章については米国提案が流出しています。米国提案は米国有力NGOのHP上で公開されており、その内容をめぐって国際的な論争を招いています。TPP協議でも、米国とニュージーランド・マレーシア・チリなどが知財条項を巡って激しく対立中と伝えられ、もはや知財条項はTPP成立の最大の障害とも考えられるようになりました。

流出文書の内容は、福井健策弁護士による抄訳解説が公開されているので、詳しくはそちらをご参照ください。要約すれば、そこで求められていることは、①著作権保護期間の大幅延長、②被害者の告訴なく著作権・商標権侵害を起訴・処罰できるようにする「非親告罪化」、③知的財産権侵害の際に高額の賠償請求を可能にする「法定賠償金・3倍額賠償金制度」、④真正品の並行輸入禁止、⑤DRMの単純回避規制、⑥反復侵害者のネット接続の強制解除(例えば「3ストライクルール」など) 、⑦(⑥を含む)米国型のインターネット・プロバイダー責任の導入 、⑧特許が切れた医薬の製造を一定期間困難にする「ジェネリック医薬品規制」、⑨医学的な診断・治療方法の特許独占化、⑩(遺伝子組み換え種子などを含む)植物・動物特許、など多様なメニューであり、「知財ルールの強化・アメリカ化」と要約できるものです。各国で導入されれば、知財の輸出大国である米国産業界には有利なものばかりでしょう。とりわけ、著作権の観点では、米国流の権利強化の側面だけが導入され、米国に存在している一般的なフェア・ユース例外規定などの、適正な著作物の利用を促進する例外規定や免責規定が導入されなければ、著作物の利用の面でも米国のみが有利な立場に立つことになる、という懸念もあります。現在、⑩を除く全てのルールは日本になく、仮に導入されれば我が国の社会・文化に大きな影響を与えることは確実です。

3 こうした個別のルールにはそれぞれ賛否があるでしょう。ただ問題は、(知財以外の20分野も同様ですが)そうしたルールが国際的な秘密交渉で一部の関係者によって決められ、かつ、条約上の義務として長期固定されることです。

知財の分野では国際条約は長く公開協議が原則でした。しかし、各国・各界の対立が先鋭化するにつれ、米国などの主導で秘密協議の傾向が強まっています。去る6月には、海賊版対策の国際条約「ACTA」が、ヨーロッパで200都市以上で市民デモが起きるほどの苛烈な反対を受け、欧州議会で478対39という大差で否決されています。その際にも、海賊版対策への反対というよりも、その密室性や曖昧さが激しく批判されました。

また、この夏には日本でも、秘密裡に準備され、議員立法でほとんど実質審議なく可決成立した「ダウンロード刑罰化」がネットユーザーはじめ各界の激しい批判を浴びたのは記憶に新しいところです。

確かに、知財・情報のルールは今や国民が等しく当事者となるものであり、そのためしばしば激しい論争を招きます。しかし、そうであればこそ、オープンな徹底した議論からルールを築き上げるほかないと私たちは考えます。そしてそのルールは、見直し・やり直しの可能なものであるべきです。

また、「交渉に参加した上で国益にそってTPPの是非を判断する」というのは一見正論です。しかし、その正論が成り立つ前提もまた、公開の協議であるはずです。秘密協議であれば、膨大な交渉項目について一部の関係者だけが「国益は何か」を判断して取捨選択し、国民には実質的な検討の機会が与えられません。結局、国民は最後の国会審議で、政府がすでに交渉済みのパッケージ全体を見せられるだけになるのです。これでは、民主的なかたちで国益をふまえたTPPの交渉を行うことは不可能ではないでしょうか。

しかも、条約は国内法に優先します。TPPで知財条項を受け入れれば、以後はその知財条項を遵守することは国際的な義務となり、変更できなくなります。これでは、社会の変化に応じ、人々のニーズや国益を踏まえて、日本にとって最善の情報のルールを作り直していくことはできません。

4 TPPの秘密性と知的財産権の面には、現在各国でも批判が高まっています。米国有力NGOの呼びかけで、12月1日・2日には、各国の団体・アクティビストのネットワーク会議がニュージーランドで開催されます。本フォーラムのメンバーからも3名が派遣されます。その内容は現地からも逐一報告し、また、その結果を踏まえて12月上・中旬には公開フォーラムを開催する予定です。

私たちは、豊かな文化・情報の創造とそれへの人々のアクセスを守り、次世代に残すため、TPPの公開協議化(公開協議化が実現しない場合の知財条項の除外)と、知財条項の問題点を訴え続けます。

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